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香の米 – 桜の約束-
2025.03.18

終業式の前の土日。
桜のつぼみが膨らみ、あと数日で咲きそうなあたたかな日。
中学2年生の麻由は洋菓子店「パティスリーAraki」に向かっていた。
担任の林先生は、高校がある高松を3月で離れてしまうらしい。
遠い東京の高校に行くのだそう。
麻由はクラスの友人と少しずつお金を出して、何かお菓子をプレゼントしようとしていた。
みんなから集めたお金を大事にポーチに入れて、麻由は昨日の夜のことを思い出した。
「先生は何を喜んでくれるだろう?甘いものが好きなことくらいしかわからないし」
家でそう悩む麻由を見て、お母さんが教えてくれたのが、この店の「香の米」というお菓子だった。
香川県の素材が使われたサブレで、「地元や香川に愛着のある人なら、きっと喜んでくれるはず」とのこと。
店に入ると、スイーツの甘くやさしい香りに包まれた。
店頭に並ぶ「香の米」のパッケージは、ふんわりと春らしい桜色。
「喜んでもらえるかも」と、奈々の心も温かくなった。
卒業式の日、麻由と友人は林先生に「香の米」を手渡した。
先生は驚いたように微笑みながら、「この場所で過ごした思い出は宝物だよ」と目を細めた。
「私も、先生との思い出や、これからの一つ一つの瞬間を大切にしていきます」
麻由は先生に誓った。
来月3年生になる彼女の頬を、春の風がふわりとなでた。
桜がそっと咲き始めている。